欲望という名の電車@北九州・北九州芸術劇場

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「唯一無二」

これから3年間、ここ東京グローブ座で、英介さんと毎年1本芝居を作らせていただけることになった。昨年も、PARCO劇場で『トーチソング・トリロジー』をやらせていただいたので、実質的には4年連続ということになる。来年の演目は、三島由紀夫の『サド公爵夫人』とすでに決定した。

僕は、篠井英介という孤高の女方に、1つでも多く、ご本人が切望する役を演じてほしいと願っている。だから、このシリーズがそのきっかけになってくれれば、と心底思う。ただ、僕はボランティアではないし、英介さんだってそんなことは望まないはず。というわけで、今回の『欲望』に関しても、新訳、キャスト一新、劇場変更といろいろと仕掛けてみた。これらはすべて英介さんに負担がかかることばかりで、ある意味、僕からの挑戦状でもある。

英介さんにとっても僕にとっても、『欲望という名の電車』という戯曲は特別な作品である。二人とも、この作品を経て今日がある、と言ってもいいほど重要度は高い。そして僕は、ブランチ=篠井英介でしか『欲望』を演出するつもりはないので、今後、英介さんがブランチを封印するとなったら、僕も『欲望』を封印する。だから、僕の演出作品ではおなじみの客入れBGM最後の曲も、いつもとは違って『欲望』だけでしか流さない曲になっている。唯一無二──そんな気持ちを込めているのである。

1つの役を何度も何度もくり返し演じる。1本の戯曲をくり返しくり返し何度も演出する。それなのに、舞台はいつも一期一会──だからいいのだ。英介さんは、初演の稽古場からずっと、これが最後だと思ってブランチを演じ続けているような気がしてならない。すると、自ずとこちらもこれが最後だと思って、その1回の芝居を全力で見られるようになるのである。

ご来場、誠にありがとうございました。ごゆっくりお楽しみください。
鈴木勝秀(suzukatz.)