HEDWIG@新宿・厚生年金会館大ホール

suzukatz2008-06-15

closed。新宿FACEから始まって、この厚生年金会館大ホールでのツアー・ファイナルまで、みなさま、本当にありがとうございました。パンフレットに掲載したテキストをアップしておきます。

「ヴァーチャル・エンドレスツアー」

昨年4月8日に、東京厚生年金会館大ホールでの公演を終え、ヘドウィグは再びトミーを追ってツアーを続けた。
トミー・ノーシスは世界的なロック・アイドル。
ツアー先も全世界的なものになる。
ヨーロッパ、アジア、南米、アフリカ、オセアニア
世界中どこにでも、トミーの需要はある。
トミー御一行様は、専用ジェットで飛び回る、ゴージャスなツアー。
一方、アングリー・インチは貧乏所帯。
トミーのツアーに影のように付き従うのは並大抵じゃない。
トミーが2時間で着く距離を、陸続きであれば、1日かけて車で行った。
スクズプ、シュラートゥコ、クルジストフとクルジストフが、交代でレンタカーのワンボックスカーのハンドルを握った。
食事はほとんどファストフード。
マックだけじゃない。
ピザ、フィッシュ&ポテト、ドーナツ、牛丼……
体には悪いかもしれないけど、ハードなツアーにメタボは関係ない!
ステージには、どの会場でも、ベルリンの壁を切り取ったような幕が張られた。
まさに、「ツアー先があたしの家、わが故郷」。
長いツアーで、その幕もボロボロになったりはした。
幕と衣裳、もちろんカツラのメンテナンスはイツァークの仕事。
ときにはバンド全員が同行することができず、南米ツアーのときなどは、イツァークと二人でアコースティック・デュオ形式で回ったりもした。
とはいうものの、全米ツアーで多少名前の知られたヘドウィグに共感し、支援しようとする人々は、どの国にも少なからずいた。
社会はマジョリティの論理で動いてはいるが、マイノリティがいなくなることは決してない。
その人たちの善意の募金や献金、食事や宿泊先の提供を受けて、ヘドウィグは愛の伝道師となって、世界中を旅した。
もちろん、相変わらず神聖とは縁のなさそうな、4レター・ワードを口にしながら。
英語が通じない国でやるときは、ボランティアの通訳が活躍してくれたが、歌はすべてオリジナルのままでも、確かに観客に届いた。
音楽は偉大だ!
東西冷戦時に、最初に両陣営の間に屹立する壁を乗り越えていったのは、ジャズでありロックであった。
あのスターリンでさえ、ジャズの侵入は防げなかったのである。
音楽は剣よりもペンよりも強し!
今では、極東の地、日本と韓国でも、根強いヘドウィグの支援団体が生まれ、世界の中でも珍しいくらいの熱狂ぶりを見せている。
そして、その長い長いツアーを経て、ヘドウィグ&アングリー・インチが東京に戻って来た!
決して終わらないツアー。
終わらせてはいけないツアー。
「Ladies and gentlemen, whether you like it or not……HEDWIG!」

鈴木勝秀(suzukatz.)