サド公爵夫人@東京グローブ座

suzukatz2008-10-17

open。26日まで。チラシに載せたテキストをupしておきます。

今回の「サド公爵夫人」は事件である

「サド公爵夫人」は、三島戯曲の最高傑作であると思っている。当時の新劇俳優の翻訳劇における演技術を念頭に置いて、あえて日本人がフランス人の芝居を書くことによって、極めて論理的で客観的な視点から、人間性の不可解さを描き切っている。そして、その不可解さ=不条理の中に、人間の真理を見出しているのである。
三島は、舞台上のことに関しても、明確なイメージを持っている。
「舞台の末梢的技巧は一切これを排し、セリフだけが舞台を支配し、イデエの衝突だけが劇を形づくり、情念はあくまで理性の着物を着て歩き廻らねばならぬ」(三島由紀夫
三島作品を演出することは、私の大きな演劇的目標の一つであった。だから、私にとって今回の演出は、"仕事"ではなく"事件"なのだ。今、それを目前に控え、武者震いしている。期待と畏れが相半ばしている。
そして、もう一つ"事件"がある。篠井英介加納幸和という、現代女形の頂点に君臨する二人の顔合わせ。少なくとも、80年代小劇場出身者にとって、これは大事件であるはずだ。
三島本人も、「構想中、老貴婦人の役を出して、女形で、やらせる、とも考えたが新劇における女形演技の無伝統を思うと、それも怖くなってやめてしまい、結局女だけの登場人物で通すことにした」と述懐しているので、今回の試みを喜んでいただけるのではないか、と勝手に思っている。
とにかく私にとって、今回の「サド公爵夫人」は事件であるのだ。
鈴木勝秀(suzukatz.)