SEMINAR

大阪公演closed。
東京、大阪ともに、たくさんのご来場ありがとうございました。パンフレットに掲載したテキストをアップしておきます。

「死んだように眠ることのススメ」

眠りは死。
目覚めは誕生。
毎日、一度死んで、翌日もう一度生まれ変わる。
生きるということは、それのくり返し。

二十代から三十代にかけて、「ピーク・パフォーマンス」というスポーツ理論に凝ったことがあった。いかに、ピーク(絶好調)の状態でパフォーマンスする(試合を戦う)か、についての研究である。日本語でいうと、"自律訓練法" である。つまり、自分をコントロールする方法ということだ。
訓練の中心となるのは、リラクセーション(リラックスの仕方)とイメージトレーニングである。誤解を恐れず言えば、プラス方向に自己暗示をかけるやり方を訓練するのだ。スポーツ以外の様々な局面で応用可能で、実生活の中でもとても有効なトレーニングである。
こう書くと、なんだか自己開発セミナーにでも通っていたみたいだが、あくまで純粋なスポーツ理論であり、基本的には本を読んで、個人的にトレーニングしていた。

やってみて、まず意外だったのは、リラックスした状態では、体が重くてだるく感じることだった。どちらかというと、疲れて眠い状態に似ている。運動せずにこの状態を作れるようになるまで、3カ月くらいのトレーニングが必要なのだが、できるようになると、キーワードを思い浮かべるだけで、リラックス状態に入れるようになる。
そして、まずその状態になってから、頭を覚醒させ(ひたいを涼しくする)、自分の目指すパフォーマンスをくり返しイメージして映像化する。頭の中のスクリーンに映し出して見る、という感じだ。頭の中でシミュレーションをくり返し、それを体に覚え込ませるのである。
それを毎晩やっていた。

ところが、やっているうちに、リラックス状態で頭を覚醒させずにいると、瞬時にして眠りに落ちてしまうということに気づいた。さらに、「死んだように眠る」というイメージを作ると、毎晩、あっという間に熟睡して、頭のリセットが簡単にできるのであった。
それ以来、毎晩"死んで"、翌朝"生き返る"ようにしている。

自分をリセットするのは、一度しか生きられない人間にとって、とても重要なことだ。
生きるということは命の継続であるが、それはいいことばかりの継続でないことは、誰もが実感していると思う。否定的なこと、マイナスに作用する事象が継続すると、どこかでそれを終わらせたい、継続を断ちたいと思うのが人間だ。
そんなとき、一度、ゆっくり眠れば(死ねば)、リセットできる(生まれ変われる)のだ。
だが実際は、その逆で、眠れなくなる。脳が休むことなく覚醒し続けるのだ。最悪の場合、自殺を思ったり、破壊を考えたりと、自暴自棄になり、自己破滅の方向へ進んでしまう。

ローレンは眠っていなかったのではないだろうか?いや、ローレンだけでなく、この「SEMINAR(セミナー)」の登場人物は、全員、眠っていないように思われる。ゆえにリセットできず、各自の身にまとわりつく、悩み、問題を抱え込んだまま、毎日を過ごしてしまう。そして、"事件"が起こる。
でも、この"事件"は、どうも人ごとではない。現代社会では、年齢性別を問わず、いつでもこういう"事件"に巻き込まれてもおかしくないムードがある。
街は眠らず、人も眠らない──それが現代社会だ。
だが、ショートスリーパー(短時間睡眠者)の方が人生を楽しめる、わけではない。
「死んだように眠る」ことをオススメしたい。

本日は、ご来場ありがとうございました。
眠らない程度にリラックスしてお楽しみくださいませ。

鈴木勝秀(suzukatz.)