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本日は、今回の旅で生観戦2試合目となるリバプール vs ウィガン。いよいよ、アンフィールドで生「You'll never walk alone」が聴ける。この日のために、iTSでダウンロードして練習しておいたので、一緒に歌ってしまおうかとも目論んでいる。15時キックオフ。1時間前にはスタンドにいたいので、午前中はホテルでのんびりして、昼過ぎにリバプールニット帽をかぶってでかける。
クイーン・スクエア・バス・ステーションのインフォメーションで、往復バスチケットを購入しようとしたら、「これがいい」と渡されたのは妙なカード。どうもこれもSAVEAWAYらしいのだが、昨日のとはまったく違う形式。まあ、値段は往復と同じだからいいんだけど、使い方がよくわからない。「アンフィールドは6番からだよ」と言われ、まずは6番のバス停へ。そこで係員のオヤジにチケットの使い方を伝授してもらう。コインで、今日の日付になるように、銀の部分を削ればOKらしい。(cf.写真)オヤジ自らやってくれる。6番のバス停に着くと、どうも何種類ものバスがやってくることが判明。すると今度はとても小さいオバサンが、「アンフィールドに行くなら、私と同じだから、後ろに並んで、私と同じ17番のバスに乗ればいいから」と、こちらが聞く前に教えてくれる。昨日のストロベリーフィールド裏のオヤジさんといい、リバプールは親切なかたが多い。ロンドンとは違う。小さいオバサンの後ろに、徐々にリバプールのマフやユニを着た人たちが並び始める。ついていけば、間違いなくアンフィールドに着くことは間違いない。
バスの窓からアンフィールドが見えてくる。かなりの人数が、アンフィールドの手間で降りるので、それについて降りる。サン・シーロに比べて、屋台も露天も少ない。ただ、行列のできたフィッシュ&チップスの店がいくつかあって、バスを降りた客はそこが目当てのようであった。アンフィールドではフィッシュ&チップスを、と思っていたのだが、店から出てきた人の持っている現物を見てやっぱりやめておくことにした。かなりソウルフード・レベルが高そうな感じ。
いよいよアンフィールド。入口はサン・シーロ以上に狭く、表に大勢いたかなりメタボな方々は本当に入れるんだろうか、というくらい。座席は木製のところとプラスティックのところがあって、あまり座り心地はよくない。通路は狭く、ほとんどの人は奥の席が埋まるまで、座席に寄りかかって立っている。まさか、このままずっとスタンディングなのでは?かなり以前の話だが、イングランドはオールスタンディングだった、とかってのを読んだことがあった。ずっと立ちっ放しはキツイなあ、と思いながら、ピッチ上のウォーミングアップを眺めていると、一際歓声が高まる。見ると、チームブレザーを着たキャロルである。ケガで欠場か。とそのあとから、とってもジェラード似の男がやはりチームブレザーを着て歩いて来る。え〜、まさかジェラード欠場?!ケガ治ってないんだ……ウィガン戦じゃ仕方ないか……となると、トーレスもジェラードも見れないのか……ま、いい。今日の最大のお目当ては「You'll never walk alone」なんだから。
コップは、サン・シーロのウルトラスに比べて、座席に着くのがとても遅い。キックオフ10分前でもまだ、かなり空席が目立つ。ところがそれから5〜6分のうちに、みるみる座席は埋まり、選手の入場時にはほぼ満席。そして、「You'll never walk alone」の大合唱……まちがいなく宗教です。なんとも言えぬ神聖な気分になる。応援というのは素晴らしい行為であると実感。最後の部分は、コップたちに混ざって歌った。
キックオフとともに、コップたちは全員、驚くほどの礼儀正しさで着席する。スタンディングでの観戦は完全に自主規制している。チャンスやピンチの場面では立ち上がることもあるが、すぐに全員着席する。リバプール以外から着た観客が、興奮してすわらないでいると、すぐに警備の人間がやってきて、キツイ語調ですわらせる。すわらない場合は、その観客のところまで近づいていってすわらせる。そんなとき、コップたちは、一斉に立ち上がって警備員の通り道を作る。アンフィールドにおける着席観戦は、とにかく徹底しているのだ。1989年のヒルズボロの悲劇、96人が圧死、負傷者200人以上を出す大惨事が背景にあるのだろう。
試合は、かなりグダグダ。メイレレススアレスがいい動きをしていたが、インターナショナルマッチの影響もあって、メイレレス、カイトが途中交代で、その後はリバプールのプレーに見るべきところはなくなり、1-1のドロー。それでもコップはブーイングすることなく、選手たちを称えるチャントを繰り返していた。心優しきコップたちに感動。
だが試合が終わると集まったときと同様に、コップたちはまたあっという間に席を立つ。その名残惜しまない感じがまたいい。リバプールアンフィールドは永遠に続くのだ、という確信を感じた。
帰路は、サン・シーロ同様、とにかく人の流れにしたがって歩く。だが、サン・シーロのときのような祝祭的な雰囲気はなく、日常に向かって黙々と歩を進めるといったイメージ。どこかの駅に向かって進んでいるのではなく、分岐がくるたびに人々は分散していく。ある程度の混雑を抜けたところで、ちょうどバス停にバスがやってきたので、またどこへ向かっているかも確認せず乗り込む。SAVEAWAYがあれば、違った方向にいても、逆方向に乗り換えればいいだけであるから気楽である。結果的に、正しい方向で無事ライムストリート駅に戻れた。
いったんホテルで休憩してから、昨日と同様、リバプール・ワンへ向かい、一か八かでイタリアン・レストランに入る。どうにかメニューを理解してオーダーをすませる。ウエイターがとても気を使った対応をしてくれたので、かなり助かった。料理はとても美味しかったのだが、一皿の量の多さに圧倒される。結局、全部は食べきれなかった。
帰りに、リバプールショップとエバートンショップを覗くが、エバートン側は今日もお客はゼロ。入口付近で、ガタイのいい黒人の店員が客を待っているのだが、それがまた余計に入りにくくさせているようにも思うのだが。
ホテルに戻って、アレキサンダー・マックイーンについて、少々調べて、リネカーがメインキャスターを務めるサッカーのレビュー番組を見る。リネカーはとても饒舌で、元々テレビ界の人のようであった。
AARDVARKのメンバーで、フランスでもプレーしていた9番から電話が入る。ずいぶんと久しぶりで、時差なしで喋りたかったとのこと。「パリにも寄ってくださいよ」と言われたが、今回はそういう予定はないので、と答える。9番はすでにパリ暮らし9年目で、パリ・サンジェルマンのジュニアチームに関わる仕事もしているらしい。サッカーやると世界に目が向くのもいいところの一つである。

・Hard Days Night HotelQueen Square Bus Station:walk
Queen Square Bus Station(bus stop6)→Anfield : bus (17) *SAVEAWAY
・Anfield→どこかのバス停:walk
・どこかのバス停→ライムストリート:bus(54)
・ライムストリート→Hard Days Night Hotel→Liverpool One:walk

そういえば、昨日のメンディップス、ミミおばさんの家で思ったこと。こじんまりとしたかわいい家で、少年ジョンがあの雰囲気を嫌ったのはよくわかる。あんな家からは、ロッカーが生まれるわけがない、というのが一般的な考え方であろう。ロッカーはもっとハードな環境の中から出てくるべきだとのイメージがある。だが、実際にはああいう家からロック史上最大のロッカーであり、詩人であり、革命家が育ったのである。