ベストセラー小説の書き方/ディーン・R・クーンツ(大出健:訳)/朝日文庫

ベストセラー小説の書き方 (朝日文庫)

ベストセラー小説の書き方 (朝日文庫)

今から十年くらい前、クーンツの小説に取り憑かれたようになったことがある。とにかく、次々と読みたいのだ。『ウィスパーズ』『ストレンジャーズ』『ウォッチャーズ』『12月の扉』『ファントム』『邪教集団トワイライトの追撃』『雷鳴の館』『呪われた少女』『ファンハウス』……ざっと思い出してもかなりある。クーンツを知ったのは、ホラー小説のガイド本だった。その中で、「チャートにできるクーンツの作品」みたいな特集があり、クーンツの小説のベーシックな組み立てがフローチャートになっていて、興味をひかれた。実際に小説読んでみると、たしかに構造はその通りなのだが、筆力があるといえばいいのだろうか、とにかく先が読みたくなるのだ。そして、次から次へとクーンツを読み漁る日々が始まる。そんなクーンツの方法論がここで明らかにされている。それも事細かに、具体例を挙げてだ。なるほど、こうすればベストセラー作家になれるのか、と納得させられる。だが、それはとても並の人間にできることじゃない。ここで明かした方法は自分にしかできない、そういう自信があるからこそクーンツは書いたに違いない。「ベストセラー小説の書き方なんか秘密じゃないよ、みんなに教えちゃうよ〜。でも、書けないでしょ。残念でした〜!」ってことだ。思った通りイヤな性格なヤツだ。もちろん、だからこそこれだけのベストセラーを書き続けることができるのだろう。そして、徹底的にシステマティックなものの考え方には、教えられることが多数ある。