黒猫・モルグ街の殺人事件/ポオ(中野好夫:訳)/岩波文庫

黒猫/モルグ街の殺人事件 (岩波文庫 赤 306-1)

黒猫/モルグ街の殺人事件 (岩波文庫 赤 306-1)

ボードレールがポオの愛好家だったことは有名だ。ポール・ヴァレリも熱狂的なファンだったらしい。当初から、アメリカ人よりもフランス人に高く評価されたのもうなずける。1809年生まれだから、すでに200年の時間が過ぎようとしている。日本は江戸時代。それなのに、まったく古びていない。怪奇、幻想が強調されがちだが、どちらかというと、異常心理を描き続けたのではないかと思うところがある。だから、作り話を越えたリアルさが感じられるのだろう。そういう心理ってあるかも、と思わされるのだ。そしてそれが、たいていのホラーが出尽くした今でも、まだ怖さを感じさせる因なのだ。