ドレッサー

suzukatz2005-07-29

本日PARCO劇場から配信されたものです。

こんにちは、パルコ劇場「新」スタンダードシリーズ「ドレッサー」の演出、鈴木勝秀です。
稽古に入って1週間経ちました。とはいうものの、稽古場ではまだすべてが"仮"の状態です。仮の小道具、仮の衣裳、仮の音楽、仮の効果音……完成形は演出家である僕の頭の中にだけしかありません。出演者、スタッフのみなさんは、それぞれの作業を進めながら、どうやってこの作品を通して自己表現をしていこうかと、試行錯誤しているところです。ですが、僕は1ヶ月の稽古期間の中でも、この混沌とした時間がとても好きです。まさに演出家しか見ることのできない瞬間、瞬間の連続なのです。
役者のみなさんは、それぞれ役を作っていくにあたって、ご自分のスタイル、ペースというものがあります。当然ですが、全員が同じようには決してならない。そのため、台詞や動きのリズム、スピード、タイミングが微妙に違ったりします。
戯曲や役の解釈といったものは、話し合いで解決できることです。演出家が明確な意図を提示し、意味、内容については、言葉で説明ができます。しかし、リズムやスピード、タイミングというものは、そう簡単にはいきません。サッカーにおいて、戦術は理解できるけど、実際にやれるようになるには、相当の訓練とともに、プレーヤー個人のレベルの高さ、プレーを通してのコミュニケーションが必要になるのと同じです。そして、それこそが稽古において一番重要なところなのです。
特に、今回の作品においては、座長(平幹二朗)とノーマン(西村雅彦)は、台詞のやりとりが公演準備(メイク、衣裳、かつらなど)をしながらですから、ひとつの動作のタイミングのズレが、演技に違った意味を付加してしまうので、とても精度が求められます。また、今回は台詞のないところでの動きがとても重要になるので、座長夫人(松田美由紀)、マッジ(久世星佳)、アイリーン(勝野雅奈恵)のみなさんは、台詞がなくても気を抜く暇がありません。またまたサッカーで言えば、パスが来ないサイドでも全力で走ってスペースを空ける動きをやり続ける、ということになるでしょうか。とても集中力が要求されるものです。
それでも、稽古場は非常に和やかで、みなさん楽しみながら、お互いのリズム、スピード、タイミングを確認し合っているようです。それは、現在来日中のレアル・マドリッドの練習風景のようでもあります。プロフェッショナルな稽古場です。
では、劇場でお会いしましょう!
鈴木勝秀(suzukatz.)