MAGICAL MYSTERY TOUR / THE BEATLES

マジカル・ミステリー・ツアー [DVD]
1967年のクリスマスに、この作品はBBCで放送された。それもモノクロで。視聴者はさぞずっこけたことだろう。ストーリーはないし、ギャグは意味不明だし、映像は実験的だし、ラスト近くにストリップ・ショーは出てくるし。この作品が"失敗作"と呼ばれたのは、テレビのクリスマス特番で流されたことによる。前衛映画として、それこそロンドンで単館ロードショーだったりしたら(見たい人だけ見る。しかも金を払って)、絶賛されたかもしれない。でも、ビートルズが作ったとなれば、そんなことにはならない。否が応でもマスメディアに取り上げられ、彼らの前衛性、創造性とは関係ないところで批判を浴び、ずっとお蔵入りになる。ところが、時代が過ぎれば、今度はお宝映像として再発されて、こうしてDVDで見ることができるのだ。つまり、『マジカル・ミステリー・ツアー』もビートルズは偉大だ、とういうことの証の一つなのである、ということだ。ジョンは、のちのち結構嫌がっていたような発言もしているが、画面の中では、いつものようにとてもはりきっている。そんな二面性がまたいいのだ。ポールも相変わらず顔に似合わずすかしているし、ジョージは明らかにやる気なし。リンゴの過剰な演技が泣かせる。とにかく、アーティストづらした無教養ロックバンドには、到底及びもつかないインチキぶりが充満していて、とても愛おしい。