新約聖書を知っていますか／阿刀田高／新潮文庫

阿刀田高は、キリスト者ではないらしい。だが、とてもキリストに傾いている。あと一歩で一般的なキリスト教信者など及びもしないほどのキリスト者になってしまいそうな感じである。キリスト者ではない外部の人間が、教養として『新約聖書』を紹介する、というのがこの本の主旨だが、実際は、阿刀田高が、キリストは信仰にするに足るべき存在なのかを確認しようとしたように思われる。個人的に『新約聖書』は、「わたしに躓かない者は幸いである」というキリストの言葉がすべてであり、誰もが必ず"躓く"のである、と認識している。