today

イギリスに着いてから、朝はずっとイングリッシュ・ブレックファーストなのだが、ケチャップとともにおいてあるブラウンソースが気になっていた。試してみたら、バルサミコ酢がベースの深みのないソースで失敗。今朝はほかのものも、全体的にしょっぱい感じがする。そろそろ飽きてきたか?
午前中にホテルを出て、マンチェスターへ小旅行。ライムストリート駅でナショナル・レイルウェイの往復チケットを購入していざ出発。出発ホームには、これから乗り込む2両編成と次発の2両編成が直列で並んでいる。もちろん、前の2両に乗り込むわけだが、何の表示もなく自分で判断してねという感じが強い。これはそのほかのあらゆることにも通じているのだが、ここでは、自分でなんとかしてね、というのが基本。その点日本は、サービスが行き届いている。だから他人任せになって自発的でなくなると考えるか、親切だと考えるかはやはり個人の問題。個人的には、自分でなんとかしてねに慣れると、そのほうが気楽なような気もする。
列車はそれほど混んでいない。だが、ほとんどの乗客が、座席は二人掛けなのだが、隣の席が空いていても荷物をそこに置かないで、膝に乗せたり、床に置いたりしている。妻の友人が、「本質的にイギリス人はpoliteだ」と評していたが、この何日かでなんとなくわかるような気がしてきた。文句を言わずに列に並んだり、ドライバーは歩行者を完全に優先したり、イタリア人のように馴れ馴れしくないのも、politeだからなのだろう。プレミアになって諸外国の選手が入ってくる以前、イングランドのサッカーはバカみたいにフェアプレーだった。マラドーナが伝説の5人抜きでゴールできたのも、ファウルで止めなかったイングランドのフェアプレーがあってこそ、という見方もある。それはもはや美徳ではなくなりつつあるのかもしれないが、一方でなくなることはないのだろうとも思う。負けてもフェアプレーをよしとする生き方は、弱肉強食や競争社会では推奨されないかもしれないが、やはり美しいし感動的だと思う。フェアプレーやpoliteであることは、個人の問題ある。他人基準とは関係ない。"自分"がフェアプレーをするのか、politeであろうとするのか、という意思の問題なのである。それはあらゆる欲望、誘惑、不安などに打ち勝つことが求められる。己を信じるということ、己を信じられるということ。己を偽らずに生きているということ。しかし、人間は弱いから、すぐに己を信じられなくなる。自信を失う。そうなると、他人と同じようにしているのが一番安心できる。ゆえに他人の動きにばかり目がいく。そうなっていると気づいたらリセットが必要……というようなことを考えていたら、1時間ほどでマンチェスター・ピカデリー駅に着く。
ピカデリー駅から地図を頼りに(それほど複雑ではない)、バスターミナルのピカデリー・ガーデンズへ向かう。途中、裁判所の入口で、バッハのようなカツラをかぶった裁判官がタバコを吸っていた。
ところで、今回の旅行では禁煙を実行していた。とにかく空港やホテルの喫煙が面倒だろうと予想し、それならいっそのことやめちゃおうという作戦であった。成田を出発する前に最後の1本を吸ってから、まったくタバコを吸っていない。タバコは肉体的に中毒性があるわけではなく、習慣の問題であるから、吸わないと決めてしまえば、それほどツライことはないはず。思ったとおり、まったく禁断症状的なことはなかった。タバコの代わりに、ミントを口に入れれば、習慣的なものも簡単に解消できた。だから、大した努力をしたわけではないのだが、ローマでもミラノでもロンドンでもリバプールでも、市民はそこらじゅうでタバコを吸っているではないか。禁煙する必要まったくなし。ただ、空港、ホテル、レストランは、やはり禁煙が徹底されているので、そこで吸えなくてイライラするよりは、やめておいてよかったとは思う。
ピカデリー・ガーデンズの観光案内所で、バスの一日券を買おうとしたが、「バスの中でお買い求めください」ということで、売ってくれない。仕方なく、バスの運転手にその旨を告げると、デイ・ライダー(dayrider)という一日乗車券を簡単に買えた。料金は3.50ポンド。
マンチェスター・ユナイテッドの本拠地オールドトラフォードは、ロケーション的に日産スタジアムのような感じで、バスを降りる場所は間違いようがない。
バスを降りてスタジアムへ向かうと、アンフィールドスタンフォード・ブリッジ同様、すぐにミュージアム&ツアーセンターの入口の看板が目に入る。アーセナルは改善してほしい。
スタジアムツアーはとてもシステマティック。まずツアーのスタートは、有無を言わさずチケット購入時刻の30分ほどあとにされる。その間に、ミュージアムを見学しておけ、ということである。ジョージ・ベストカントナは英雄扱いだが、ベッカムの扱いは思ったとおり小さかった。当然ファギーは神様級。ミュージアムをひと通り見終わると、ツアースタート。ツアー客は、まったく無駄なく動かされる。そして、これまで見てきたどのスタジアムよりも豪華で、特別感があって、勝者の余裕を感じる。途中、数々の栄光の歴史のモニュメントとともに、ミュンヘンの悲劇を忘れないために設けられた、祈りの場ミュンヘントンネルなども回る。ドレッシングルームもミランベルルスコーニの趣味で赤黒の超ゴージャスな部屋)ほどではないが金かかってる感じ。個人的には、インテルリバプール質実剛健なムードのほうが好みではあるが。そしてゲートをくぐってピッチへ出る。まさにそこは"THE THEATRE OF DREAMS"。マンUファンならずとも、なかなかの興奮を味わえる。個人的に印象に残ったのは、VIPや取材陣に対する扱いがほかのクラブと比べて抜きん出てよいことである。それはいい印象では決してない。労働者のチームだったはずなのに、いつのまにかある権威になっているように感じられるのだ。だが、それも自分がインテリスタだからで、マンUファンはの気持ちはどんどん盛り上がっている。最後にMEGA STOREに送り込まれ、「You'll never escape.」と言われるころには、子供ならずとも財布のひもは緩みまくっている。リバプール同様、その商品の数はハンパじゃない。だがマンUに金を落とすつもりはないので、何も買わずに退散。
スタジアムを出ると、いきなり激しい雨。それがすぐにヒョウに変わった。幸いバス停は屋根付きなので、そこでバスを待つ。バスはすぐに来た。
ピカデリー・ガーデンズに戻るころには雨も上がり、しばしスタバで休憩。そして、街を軽く散策。マンチェスターにはスーパーだけではなくコンビニがある!住むにはリバプールより便利そうだ。寿司屋や中華、エスニック料理の店が一緒くたに入った、妙なビルを発見。なかでも「潮髪型屋」というのが気になる。
再びリバプールに戻り、二日続けてだがLiverpool Chickenへ行く。例のスキンヘッドのオヤジもひと目でこちらを認識し、より親しげに話しかけてくる。昨日同様、今日もほかに客はいないので、しばし雑談。このオヤジはトルコ人で、こちらが日本人だとわかると、稲本がガラタサライにいたことを覚えている、と言う。「いつまでいるんだ?」「明日、ロンドンに戻って、チャンピオンズリーグ見たら帰る。アーセナル vs バルサだ」「いいなあ。でも、オレはアーセナルは大嫌いだ」「だろうね」「で、チャンピオンズリーグはいくらなんだ?」「さあ、わからない」「そうか」とか言ってる間にチキン&チップスも揚がり、多分永遠にトルコ人のオヤジともお別れになった。

・Hard Days Night Hotel→Limestreet St.:walk
・Limestreet St.→Manchester Pic.:NR
・Manchester Pic.→Piccadilly Gardens:walk
・Piccadilly Gardens→Old Trafford(Manchester UTD)→Piccadilly Gatdens:bus(x50) *dayrider/3.50ポンド
・Piccadilly Gatdens→Manchester Pic.:walk
・Manchester Pic.→Limestreet St.:train(Northen)
・Limestreet St.→Hard Days Night Hotel :walk