『仁義なき戦い』をつくった男たち 深作欣二と笠原和夫/山根貞夫・米原尚志/NHK出版

新幹線読書帰り。レンタルビデオで一番見たのは、東映ヤクザ映画だろう。それも実録物が第1位にくる。中でも『仁義なき戦い』シリーズは、各作品をそれこそ10回以上見た。これは、その製作現場の実録である。事実関係はかなり正確に記載されていて、資料として面白い。ただ、深作と折原という人物の評伝にはなっていない。もちろん、あえてそうしたのだとは思うし、資料を提出することによって、読者それぞれに深作像、折原像を結ばせようとしたのだと思う。だが、もう少しドラマが描かれていてもよかったかな、との印象は残った。

笠原も深作も、いわゆる「巨匠」や「芸術家」タイプではなかった。二人はそのキャリア前半においては東映の社員であり、娯楽作品の量産を担いながら、そのなかに自身のテーマや"こだわり"を込めてきた企業内の作家であった。

深作欣二笠原和夫も、そういう巨匠ならざる巨匠である。

つまり、POPだったのだ。