中年英語組-プリンストン大学のにわか教授/岸本周平/集英社新書

中年英語組 ―プリンストン大学のにわか教授 (集英社新書)
著者は、1956年生まれ、東大卒。38歳で大蔵省からプリンストン大学国際問題研究所に客員研究員として派遣され、翌年には同大学の東洋学部で客員講師として日本経済論を講義した。と書くとバリバリのエリート像を想像するが、これが読んでみると情けないくらいに英語と格闘した経験が述べられ、思わず親近感をいだいてしまう。それでも、学生の質問すら聞き取れずに四苦八苦していた割に、講師としての仕事を成し遂げたのは、ひとえに日本語で専門知識が確立していたからだろう。要するに、話す内容がちゃんとあったということだ。たとえ日本語であっても、何を話すかが定まっていなければ、人前で講義などできやしない。基本的な知の蓄積が、何よりも重要だということをあらためて思った。英語に関しては、最終的に単語力が強調されている。後半は、英語から離れ、アメリカ文化の良い部分の紹介になっている。

基本的には、アメリカ社会の良い部分だけをピックアップした。所詮、物差しが違っているのだから、悪いところをあげつらっても得るものはない。

こういう前向きな姿勢にも共感できる。2004年にトヨタに転出している。やっぱりエリートではある。